*天候不順で尾根登りに
岩稜帯歩行の足慣らしで、ロクロ谷ニゴリ谷から鎌ガ岳に登る予定をしていた。あいにくの空模様で、手回しのいいYさん(以下敬称略)の計画書提出済第二プラン、スカイライン三口谷から日蔭尾根を登ることになる。ここは雪山下山ルートとしてたびたび話しに聞いていたが、私は始めてのコースであった。
*まず急登
最近、三口谷には各所への立派な案内板がたくさん建てられようになった。沢を渡るための置石もよく整備され、三口谷へは入りやすくなっている。しかし日蔭尾根への登山口には標識もテープもない。
置石を渡りよく見ると、かすかな踏み跡がある。ここから急な斜面を一気に登ることになるが、樹林帯の中なので手掛かりは多く、助かる。時々踏み跡が薄くなるが、Yの言によれば、ここはpeak
to peakで良い。この地形を理解していれば、ルーファイは余り難しくない??(私は後)
*イワカガミ
高度が上がるにつれ、イワカガミが増えてくる。Yの表現では、一面に密生していた。久しぶりに見る光景だ。この花は人間が苦手なのかも知れない。全てに花が咲いたら、すばらしい桃源郷になるだろう。
シロヤシオも多い。上部に素晴しい広場があったので、後述する。
ブナもかなり生えているようだ。鎌の山頂に「天然記念物ブナ原始林」の説明板がある。犬星谷、三口谷登山道の間に広がるとあったので、その隣接部の日陰尾根にもブナ林がのびているのだろう。
ミズナラはブナより多いかもしれない。シロモジも多いので、秋の紅葉は美しいだろう。所々で樹木の下部の樹皮が食べられて?いたが、ここにも鹿が入り始めたのだろうか。
ウラジロモミ、ゴヨウマツなど山を感じさせてくれる木が点在しているのもうれしい。
*岩稜帯に遊ぶ
背丈弱の岩が重なり合っているところをなんと呼ぶのだろうか。ここを昇り降りしなければならない箇所がひとつあった。結構高度感もあり、ルートもはっきりせず、鎖もないので、最初はスリルもあった。上に登ると、すばらしい展望がまっていた。岩の上は立っていられない程強い風が吹いていた。
北方には御在所岳やゴンドラが、眼下にはスカイラインがS字状に走っている。その上には土砂崩れの跡だろうか、裸地の大きな三角形で段々状に整備された、異様な光景が広がっていた。御在所岳南面が、上から下まで一望できた。
南側は雲で展望が利かない。前面(西方)にはけっこう急斜面のピークが待っている。
*シロヤシオ広場
再び樹林帯の中の急な登りがしばらく続と、直径30m位の広さのザレ場に出会う。その周囲を重層的にシロヤシオが取り囲んで、真ん中にも立派な木が生えている。Y推薦の場所で、すばらしい風格を感じさせる樹形をしたシロヤシオは圧巻であった。全ての木で開花すれば、すばらしいだろう。
ここは強い風が吹いていた。上記岩稜帯とともに、風の道になっているのだろうか。
この尾根は、どの木も中木以下の高さなのは、風雪などの気象条件がきびしいためだろうか。
登りには雲で展望はなかったが、下山時は、雲が切れ鎌ガ岳の展望をぞんぶんに楽しんだ。次回は双眼鏡で、鎌の頂上からここのシロヤシオをキャッチしてみたい。
*ヤブこぎ解除 シロヤシオ広場から樹林帯を登りきると、縦走路(鎌〜武平峠)に出会う。その直前数十メートルに渡って、背丈を越える笹が刈られていた(相当の難作業)。
無雪期におけるこのコース最大の難所が解消されていて、Yは驚く。誰が?何の目的で?おそらく集団登山を計画した人が?
かくして私は、ルンルン気分で日蔭尾根を登ることができた。
しかし最後のヤブがなくなったら、下山を中心にこのコースの利用者は激増しそうな気がする。秘境とはいえない日が近いかも知れない。
日蔭尾根では、往復とも誰にも出会わなかった。二人だけの世界に遊ぶことができた。天候悪化の予報を、幸甚に思う一日であった。
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