中央アルプス縦走デビュー
記:ぽんぽこやまのたぬきちゃん

とき:2001年10月5日〜7日
メンバー:単独
行程 5日 名鉄BC18:30→駒ヶ根市21:20…駒ヶ根グリーンホテル(泊)
    6日 駒ヶ根駅5:30…しらび平6:21/6:45…千畳敷6:55/7:25… 乗越浄土8:00…濁沢大峰9:50/10:00
        …檜尾11:05/11:15…熊沢岳12:25/12:35…木曽殿山荘13:50(泊)
    7日 木曽殿山荘6:05…空木岳7:08/7:20…南駒ケ岳8:50/8:57…仙涯嶺10:00
        …越百山10:55/11:12…越百小屋11:42/11:55… 須原駅15:42/15:51
        →中津川駅16:26/16:32→鶴舞駅17:44

 積雪期のトレーニングでしか訪れたことのない中央アルプスを、初めて縦走した。公共交通機関で縦走しにくい中アは、今まであまり範ちゅうになかったのだが、冬の下見も兼ねて縦走することにした。この2日間のことを思い出すと、久しぶりに自分でも納得のいくいい山になったと思う。

 5日、仕事からバタバタと帰って、山スタイルに着替え、ザックをしょって名駅 に向かった。名鉄バスセンターから駒ヶ根市駅へ行く最終バスに飛び乗った。山ヤは誰もいなかったが、さすが連休前、バスはほぼ満席。

 駒ヶ根市駅へ着いてすぐ、翌日のバス乗り場と駅前チェック。バス停の張り紙で6〜8日の間、5時30分始発の臨時バスが出ることを知り、同じく明日違うコースで入山する佐藤パーティーに連絡をとる。駅前の24時までオープンしているスーパーもチェック。その後、ホテルにチェックインして、お風呂に入ってすぐ寝た。

 翌朝5時15分くらいにバス乗り場に行ったが、もうすでに15人くらいの列。5時30分発のバスは駅でほぼ満席となる。途中通った菅の平のバス停は数百人の長蛇の列。終点しらび平に着くと、もうすでにタクシーで入った人たちも多く、2本目のロープウェーに乗ることになる。想像はしていたがずっとそれ以上に、朝早くから観光客であふれている。やっぱり、駅から始発のバスに乗って正解だったなぁと、千畳敷について思った。

 千畳敷ホテル前では、入山者に計画書を書かせてチェックしていた。なんの気なしに宝剣に入る人も多いらしい。「宝剣は急な岩場です。ガイドブックなどで調べてないんですか?」「はぁ?!(なんで、イチイチ言われないといかんのだ!!という態度ありあり)」と、チェックする側とされる側は互いにケンカ腰状態。

 私は、登山口に出す予定で持ってた計画書を提出。それだけで全く対応が違う。「何年山やってるんですか?」という質問に、「15年くらいです」と答えただけでパスした。こんな質問だけで意味あるんかなぁと思いつつ、そそくさとその場をあとにした。

 乗越浄土までは青色吐息で登っていく運動靴スタイルの観光客の方が多い。ダダダと登って、ドスンと腰を下ろして休むという人ばかり。そりゃ、疲れるわなぁ。

 宝剣は冬の下見と思いつつ、あれよあれよという間にピークに着き、「あっ、ここ?」って感じで終わってしまった。極楽平へ下りるのは雪が着いてると怖そうだと思いつつ、またここもすぐ下りてしまった。

 三ノ沢への分岐で1本とる。春に行った三ノ沢もきれいだ。今度こそはピークまで行き、極楽平からは泣かずに、スムーズに下りれるようにしないかんなぁと思いつつ稜線を眺めた。

 極楽平を過ぎるとパタッと人がいなくなり、前後の縦走路を見渡しても2、3人くらいの登山者の姿しか見えない。「わぁー、ラッキー!! 連休なのに人がいないぞー!!」自分のペースで歩けるなんて久しぶり。9月の連休に行った八ヶ岳の縦走なんて、人が多くて立ち止まってばっかりだったもんなぁ…。

 ホントに、檜尾を過ぎたあたりまではそうだった。が、熊沢岳の少し手前で某旅行社の30人ほどのツアーを前方に発見。嫌な予感…。だんだん近づいて見てみると、ちょっとした鎖の付いた岩場だったのだが、「どこに足を置けばいいんですかぁ?」「はい、ここに置いてー」と、30人が30人ともやってござる。うひょー、当然そこで待ちの渋滞になるわけで、1人2人と増え5人ほどが待ちとなる。よくよく見ると「ホントにもう、どう歩いていいかわからないのぉ!」という人ばかりで、百名山の空木登頂ツアーかなんかしらんけど、「こんな人、来ちゃいかんでぇー」「もっと修行してから来やぁー」と心の中でブツブツ思う。

 それにしても怒れるのは、寒い中かれこれ10分以上待たせているのに、ツアーリーダーが私たち待ってる人に配慮しないことだ。一言謝るとか、危険なところを過ぎたら先に通らせるとか、普通せん?どう見ても、道は我がツアーのものって感じなのよ、これがまた。

 かなり怒れてきたところで、私よりもずっと待ってた待ち1番目の人が「先に行きまーす」と言ってくれて、結局ダラダラと広がっている30人をかなりの猛スピードで通り越した。追い抜かしたあと、待ちの5人は「なんかペース狂っちゃったね」と苦笑い。まぁこれが、今思えばその後の始まりを示唆していたのだが…。

 なんとなくこのときの待ちの5人揃って熊沢岳で休憩となり、木曽殿山荘は今日すごく混むと聞く。さっきの30人ツアーもそうだし、まだ他にもいくつかの団体が入るというのだ。120人定員なんだけど、私も20人は追い越してきたしなぁ…。時間も早いので、次の駒峰ヒュッテまで頑張るかと思って、木曽殿山荘に着いてから状況を聞いたが、ヒュッテは布団が20人分しかないので、予約なしでは難しいと聞く。まぁ覚悟を決めて、今夜は木曽殿山荘に泊まらせてもらうことにする。

 17時頃まで次から次へと登山者が小屋に到着し、「いったい私たちどうなるの?」。しかし、そんなことでイライラしてはいけないのだ。平常心平常心と、山荘に置いてある山の本を見る。「山での簡単おいしい食事レシピ」を拾い読みしてメモってるうち、結構これにハマってしまった。

 夕食時小屋のご主人から、それぞれのコースの説明と、明日の空木で百名山完登する女性の紹介があり、小屋のオリジナルTシャツがプレゼントされた。

 夕食後、大広間のような2階に布団がびっしり敷き詰められ、名前を呼んで順番に、1枚の布団に3人ずつ入れられた。ツアーだけひいきにする小屋が多い中、みんな平等の小屋の姿勢には好感が持てた。私の名を呼んだご主人、「女の人1人か…知らない男の人に挟まれるのでは気の毒だなぁ」「あっ、別にいいです」と言ったが、階段のすぐ横の狭いスペースに女性と2人で寝させてくれた。

 翌朝も3時過ぎから2つのツアーの出発準備で、全員が起きることになる。混んでいるのもあって、みんなイライラしているが、こんなときも怒って無駄なエネルギーを消耗してはいけないのだ。

 朝食前、ご主人が「寝れなかったでしょう?すみませんでしたね」と、階段そばに寝ていた私たち一人ひとりに声をかけてくれた。ご主人のせいではないのになぁ…。「ここのご飯が一番まずかった」と言ってた人もいたけど(私の体験では決してそうではないけどな)、ツアーも個人もみんな平等に扱ってくれた小屋は初めての気がしたなぁー。

 みんながイライラぶつぶつ言ってるのが何だか申し訳なくて、小屋から出るときに「いろいろお世話になり、ありがとうございました」と声をかけに行ったら、ご主人が「荷物になるけど」と言って、弁当を持たせてくれた。こんなとき、単独の山ヤはホロリとなるのよね…。有難く受け取って、小屋をあとにした。

 越百小屋も団体が泊まるらしいとの情報もあったので、越百小屋泊の予定を取り止め、今日のうちに帰名するつもりで歩き始める。

 空木岳はさすが、百名山。なかなか見た目にもいい山だった。多くの人は池山尾根で下山の様子。越百に南下する人は、私より皆歩くペースが速い、単独の山ヤばかり。つかず離れず、ほとんど同じようなペースで歩く。一定の距離を保ちつつ、お互いに気にはしながら歩く、そんな山慣れたおじさんばかりで、大変歩きやすかった。

 鎖場も多く、地図上で危険マークが付いてるところも多かったが、どちらかというとそういうところは平気で、私としては、花崗岩が細かく砕けた荒れた急な下りの方が、すごく滑るので怖かった。

 越百小屋へ向かう道で行き違う人たちは、単独女の私が珍しいみたいで「えっ、おひとりですか?」「今日はどこまでですか?」と必ず聞いてくる。「下山します」と伝えると、必ず「越百小屋はいいよー。昨日の夕食は揚げたての天ぷらと茶碗蒸しと具だくさんの味噌汁、デザートにぜんざいまで出たよ。またこれがおいしいんだ」「ご主人もなかなか味のあるいい人だったよ」とみんなが言う。

 揚げたての天ぷらと茶碗蒸しにはかなり未練もあったが、小屋に11時30分過ぎに着いたので、やはりきっぱり下山することにした。

 小屋からの下りは樹林帯だったので、樹の根っこなどに滑らないよう気をつけながら下りた。木曽殿山荘で知り合いになった気のいいおじさんと、もう一人のおじさんとほとんど同じように下山して、伊奈川ダムからタクシーに相乗りして、須原駅まで下りた。ちなみに、伊奈川ダムの職員の人にタクシーを頼むのだが、とても感じよく無料で呼んでくれた。

 また、須原駅の駅長さんは切符を買うときに、「また是非、こちらに立ち寄ってください」と私たち一人ひとりにみかんをくれた。  今回は予定どおり冬の下見もでき、天気にも恵まれ、自分なりに納得のいく歩きもできて、とても満足している。一人で登っていても、いろいろな人、それは近くに歩く山ヤだったり、小屋の人だったり、ダムの人だったり、タクシーの運ちゃんだったり、駅長さんだったりに見守られて、無事目的を達することができたんだなぁーと帰りのJRに揺られながら想った。

 今度はいつ中アに行けるだろうか…。