女人結界、講、陀羅尼助の山上が岳

週末によく降る雨を避けて、10月26日(水)〜27日(木)の晴天をえらんで、紅葉狩りへOさんと出かけた。春に稲村が岳に登ったときからの計画である。

名鉄・近鉄・南海の3・3・SUNフリーキップ(連続3日間、5000円、バス合むと6000円。特急料金は別に往復3120円)で名古屋を9時30分出発。1枚のキップに大和八木、橿原神宮の乗換時刻と座席が示されており、乗換に苦労せず助かる。

下市口下車、駅前の桜川食堂で昼定食、680円の値段にしては美味い。洞川(どろかわ)温泉でバスを降り、陀羅尼助(だらにすけ)の看板を架けた旅館が並ぶ街を抜けて、登山口に近いテント場にいく。洞川エコミュージアムの隣りに松林キャンプ場の看板あり、誰もいない筥間もなく主人が現われたので、宿泊を申込む。

テントを張ってから、夕食に。テントで仲間同志の食事も楽しいが、地元の人たちと触れ合える街中での食事もよいもの、さっそく温泉街にくり出す。しかし、観光客相手の店は5時ごろ店じまい。地元の人が飲む店をさがし、名前をメモしなかったが交番に近いお好み焼き屋に入った。

お好み焼きと焼酎、鹿肉の刺身を注文。開店早々で、客は私たち2人だけだったので、女将さんといろいろおしゃべりをした。話は女人禁制のことになった。

Photo by (c)Tomo.Yun
ゆんフリー写真素材集より

ここは長い歴史をもつ山岳信仰の地、信者は講をつくって毎年のように山上が岳に登る。温泉もあって、信者のための宿が建ち街がつくられた。男女平等を主張して、信者でない女性が山に登っても多くの場合、それは一回か、せいぜい数回のこと。信者は信仰のゆえに講をつくってくり返し登る。山上が岳は信仰の山、山頂にお参り、修行に登る。女性が自由に入れるようになれば、信仰はすたれ山も里もさびれてしまう。

地元の女性は登らない。山に大峰山寺の人たちがいないとき、よその女性が登っていることを地元は知っているが、物理的に止めようがない。

女将さんから聞いた話は大体こんな内容であった。一方に山岳信仰の教義や信教の自由があり、他方に両性の平等があり、どちらにも主張がある。山岳信仰を支え、山岳信仰に支えられる生活がある。女人結界を実力行使で突破することは、私には疑問に思えた。

Photo by (c)Tomo.Yun

翌27日、山上辻からブナの中、快晴の陽光に照らされ黄色に輝く山道を行く。レンゲ辻に木製の門、女人結界と大書されている。ここから山頂への急な登り、背後に稲村が岳が見える。山頂の大峰山寺本堂をへて宿坊に向かう。あたりの道には、「百回記念登山、○○講」の石碑が林立している。

日本岩や西の覗きでは、全山を染めた秋の眺めを楽しむ。ここから見下ろす秋色につつまれた山の遠い裾に洞川の学校や家並みがある。洞辻茶屋の道を下る。

テントをしまい、バス停に向かう。途中ふり返り西の覗きあたりを見上げ山と別れる。この街では旅館と陀羅尼助の二つの看板が同居している。山の茶店でも陀羅尼助の出張販売の看板があった、私の古い記憶には、「だらにすけ」でなく「だらすけ」と刻まれている。一軒の旅館に入り、Oさんが陀羅尼助を買う。この和漢胃腸薬は、大峰で修行していた役行者からこの村に伝えられ、江戸時代から講の網の日によって民衆の中に普及した。今もテレビの宣伝なぞなくてもやっている、と聴く。

15時55分、最終のバスに乗る。
(2005年10月 S)