鳳来寺
− 黄柳野高校と千枚田 −
富田(征)


 9月14日と15日鳳来寺山系で黄柳野高校の生徒諸君に「キャンプと鳳来寺山を登る」企画をたてました。
あつたから5名、門谷地区、市民ネットワークの方々11名が協力するために集まりました。

 しかし残念ながら生徒諸君の諸般の事情があり、生徒参加ゼロです。
急遽予定変更をして14日は黒谷家に宿泊を変更しそこに集合しました。
今後どのように高校生とつきあうか白熱した議論を3時間余りしました。

 夕食はY氏の奥さんの指導の元、全員で作ります。Y氏が猪の最高級の肉を寄付してくれました。楽しい食事会になりました。深夜1時までの話し合いが続きました。

15日は「はじまりの森」で大人だけで下草刈と小屋作り、さらに千枚田の見学と決めました。

 鳳来寺の参道を少し散策しました。型破りに生きた山頭火の碑があります。
山頭火は俳人というより自由詩の作家だと思います。ある面で俳句に新風を吹き込んだ偉大な人です。

 ・ 山頭火寝たるか秋の鳳来寺

黒谷家は我々の憩いの場所です。大広間が幾つかあります。そこに秋蝶が飛んでいました。庭の片隅に金木犀の香りがしています。

 ・ 蝶の迷い込みたる大広間
 ・ 木犀のかほり漂う庭の隅


夕食はそれは楽しいものでした。Y氏の提供の猪はすき焼きにしました。こんなに食したのは初めてです。Y氏の奥さんのはからいで次から次に食事ができてきます。

 ・ 牡丹鍋囲みて語る自然保護
 ・ 猪鍋をつつく三河も奥の宿
 ・ 山宿に持ち込まれたる今年酒


鳳来の冷たい水に浸した冷奴はまた格別です。

 ・ 鳳来の冷たき水の新豆腐

ちょっと外に出てみます。

 ・ 一人出で月夜の中にちちろ鳴く

朝、ひよどりのかしましき叫びに目覚めました。朝顔の盛りは過ぎようとしています。

 ・ 朝顔も数えるほどに咲きへりぬ
 ・ ひよどりのけたたましさに朝目覚む


はじまりの森は猪に荒らされています。みみずを食すためと聞きました。

作業は気心を知った仲間内、早いものです。
杉材の香りがします。山々が紅葉が始まっています。こんな環境で汗を流すことの幸せを感じます。

 ・ 杉材の匂ふ鳳来秋深し
 ・ 背をかがめ萩のトンネル潜る抜け
 ・ 猪のいでし足跡鳳来寺
 ・ 猪去りて山肌あらわ鳳来寺
 ・ 鳳来寺いま全山の紅葉す
 ・ とどまりし夕陽に雑木紅葉かな
 ・ 蜩(ひぐらし)や土にまみれた手を洗ふ


作業後千枚田の見学です。千枚田は1270枚あるとのことです。その内使われているのが400枚たらずであとは休耕田です。鳳来の仲間に提供するから田んぼを作らないかとの申し出があったからです。決まればあつたにも1枚どうかと話がでました。

 ・ 葉鶏頭垣根にしたる奥三河
 ・ 棚田径行けば稲架よく匂ひけり
 ・ 稲架かけて棚田一面晴にけり
 ・ 鳳来の棚田の音や落し水
 ・ 傾きし案山子に強き棒を挿す
 ・ 威銃(おどしづつ)大音響が谷渡る
 ・ 稲雀脅す空砲放ちけり


初期の目的を今回はたすことは出来ませんでした。しかし多くの話し合いが出来たことは大変意義深いものがありました。
新しいことを進めるのにはあせらないことだと思います。地に足をつけた地道な活動を今後も続けていくつもりです。

 ・ 山日記ともかくつけし夜長かな
以上