初冬の浜石岳に行く |
真っ白な富士山展望 |
記 富田(征) 日:12月18日(土) 天気:快晴 Mさんの山行のスタイルには刺激を与えられます。それはただ山に登ると言うのではなくて、山に登る目的を明確にされているということです。「あつた」でも深田久弥の百名山を踏破した方は彼女しかまだ知りません。来年の夏は穂高から槍へ大キレット越えを企画しています。ですから全てのトレーニングが計画的且つ真剣です。今回の浜石岳も「真っ白な富士山展望」という目的を立てています。そして1〜2年かけて全て富士山の見える山を登りきろうという企画です。 この企画に私も強い関心を持ちました。02年の春合宿に、Mさん等と山梨県側から三ツ峠を経て十二ケ岳を縦走しているだけに、南から東から西からの富士は是非拝見したいと思ったからです。第一回のスタートは七面山からはじまりました。しかしこの時、私は鳳来寺の忘年会と収穫祭でどうしても参加できませんでした。今回の浜石岳と1月8日の沼津アルプス縦走には勿論参加を決めました。 皆さんが参加しやすいようにMさんの企画は青春18キップの有効活用です。なにしろ2300円プラス300足らずのバス代のみでいけるのですから。 名古屋を出たのが6時30分でした。(私は岡崎から乗車)興津駅着10時15分それからバスで但沼まで約20分で着きました。さすがに風は少しばかりひんやりします。野のものはすっかり冬もよいです。 ・ 風音や野に動くもの枯芒(かれすすき) ・ 浜石岳(はまいし)の嶺より冬が下りてくる (画像は 「デジタル楽しみ村」 のものです) このあたり全山が蜜柑山という風情です。農家の方が一家総出で収穫を、至る所でしています。登山道に入りますと杉林です。もう花粉を蓄えた実が零れんばかりです。天候のせいで花粉が例年より多く発生すると報じられています。これは植えっぱなしにした人間に対する天罰でしょう。花粉が「自然をもっと大切にしてよ」と教えてくれているのかも知れません。その杉林の上空に甲高い声がします。見上げると寒鴉です。天空を切り裂くようなけたたましい鳴き声をあげます。さらに台風の影響でいたるところ杉か根こそぎ倒れています。 ・ 高々と舞ひ杉山の寒鴉 ・ 寒鴉鳴いて空気の罅(ひび)割れし ・ 眠る山根こそぎ倒れ杉林 (山眠るが冬の季語です) さすが浜石岳は地元のハイキングクラブがよく山道や道標を整備していて歩きやすいです。その山道は雑木林の落葉が降り積もっています。心地よい音がします。古い落葉に新しい落葉が重なり落ちています。 ・ 浜石岳(はまいし)の山路明るき十二月 ・ 落葉踏み山の木漏れ日踏んでをり ・ 落葉にも老いと若さのありにけり 一時間もしたら尾根に出ました。眼前に富士山です。皆の歓声が聞えます。ここで一本です。 ・ 蜜柑山より大富士を一望す (蜜柑山が冬の季語) 二時間足らずで山頂に着きました。50名近くの先客がいます。少し前に下山してくる「ふわく」の20名近いメンバーとすれ違いました。彼等は得意とするバスで来ていました。しかし同じ仲間に会えるのは嬉しいものですね。山頂は正に眼前に富士山が見えます。南アルプス北岳も見えます。七面山もみえます。快晴の上温度も高く冬とは思へない温かさです。Mさんの計らいで30分も大休止を頂き堪能できました。富士山に霞がかかっています。霞は居心地がよろしいのか富士の懐に居座っています。雪の少ないのに驚かされます。白と黒の陰影が鮮やかで陰の部分の窪みが笑窪のようです。宝永山の影が長く伸びていますが、なんか菩薩さんの顔のようにみえます。 ・ 冬霞(ふゆかすみ)富士ふところを出たがらず ・ 冠雪の富士の笑窪を深くして ・ 菩薩顔して宝永山の冬模様(ふゆもよい) 下山の開始をして直ぐに梅の木が山頂にあるのに気づきました。その梅がちらほら咲いているのです。今年の暖冬を象徴しています。冬桜がほぼ満開ですが小さな花弁がけなげです。 ・ 登り来て浜石岳の梅早し ・ 風音も優しくとほる冬桜 下山は楽しいですね。蜜柑山の間を縫ってその先に駿河湾がみえます。1月8日に行く沼津アルプスも霞んでいますがうっすらと見えます。由比町は水仙を大切にしているのですね。いたるところが水仙で埋め尽くされています。ひょつとしたら町花かもしれません。実にのどかな風景です。海は「のたりのたりかな」です。 ・ 水仙や風の冷え来る峠路 ・ 蜜柑山溢れて海へ黄をこぼす ・ 春近し駿河の海はのたりかな 海と富士山まさに浮世絵の葛飾北斎の世界です。西の空が紅に染まり初めてきました。少し足が速まります。何故ならば桜海老の掻揚げとビールを食したいからです。16時15分に由比の駅前につきました。 ・ 浮世絵や師走の由比の遠景色 ・ 冬夕焼(ふゆゆやけ)紅を極めて暮にけり ・ 冬山や掻揚げを食べ山終し 良い企画をしてくれたMリーダそして良きメンバー。最高の山日和。富士山が最後まで堪能でき、最後の仕上げがビールと桜海老実に思い出に残る山行でした。 岡崎駅からの帰路、寒月に感謝しました。 ・ 雲一つなき寒月を拝みけり |
了 |