北方稜線

日程 9/18〜20

山域 北アルプス 剱岳

メンバー M.I T.N K.Y(記)

少し前になりますが、元会員MIからの誘いで、北方稜線に行ってきました。この時期の天気は台風の時期で不安定。今までも何度か剱の八峰を計画するも天候不良で中止に。もうこの時期の剱とは縁がないと思っていたが、今回も微妙な天気だったが、現地敗退覚悟で向かうことに。前夜に富山駅前のビジネスホテルに泊まり、当日朝一の富山地鉄で立山駅まで。TNとは立山駅で落ち合い室堂に向かう。室堂に向かうバスは横風を受け結構揺れていた。室堂に着くも現地は雨。風もあり、現地にいた登山者の中には耐風姿勢を取っている人も。とりあえずMIが前泊している剱御前小屋に向かう。TNは最近マラソン、トレランと走り込んでいるようで、ペース早めで頑張ってついていく。

雨は止みはせず降ったり止んだり。たまには青空も顔を出す。剱御前小屋に到着し、MIとも落ち合いすぐに本日の宿泊地の池の平小屋へ向かう。剱岳には2回登っているが2回とも早月尾根からなので、室堂からのルートは初めてでとても新鮮。剱沢に初めて入るが雪渓はすぐ出てこない。歩き始めるとすぐに雷鳥が出迎えてくれた、というか、踏ん付けてしまうほどすぐ近くに現れた。何匹かの群れ、親子だろう。母鳥が警戒して鳴いていたが、子鳥は構わず僕らの近くを走り回っていた。最近よく雷鳥を見かけるが本当にかわいい。

剱沢雪渓は剣沢キャンプ場からすぐに出てくると思っていたがしばらくは出てこず、色々調べていると雪渓は年々少なくなっているようだ。明日通る予定の小窓雪渓も例年だとある程度硬さがある残雪の上を歩くみたいだが、今年は雪がすでに溶けてしまい、氷河が露出しているらしい。しばらくして雪渓が出てくるもあまり良い状態ではなさそうなので、剣沢を巻くように右岸を歩かざるを得なく、時間がかかる。

ようやく見えた雪渓もズタズタでクレバスも多く歩けそうにもない。

左を見上げると平蔵谷、長次郎谷の雪渓が見えるがどこも悪そうだ。

どの谷も深く険しい谷を形成している。黒部特有の地形だ。

明日通る予定の小窓雪渓。素直に通れそうな状態には見えない。

途中雨が降ったり止んだり、カッパを脱いだり着たりと天気が安定せずに池の平小屋へ向かい、雪渓の巻道を進んだため、予定よりも時間がかかってしまったが小屋に到着。風呂もあるとの事だが他のメンバーが風呂に行っている間先にビールを頂いた。小屋にはガイドパーティーと僕らのみ。ガイド、小屋の方に色々情報を聞いたところ、小窓雪渓の状態は良くないようで、ガイドパーティーも北方稜線に行くとの事だが小窓雪渓は通らず、池の平山の稜線経由で小窓に向かうそうだ。僕らも不確定要素のある雪渓はやめてガイドパーティーと同ルートで行くことに決める。

剱岳に向かう我々の背後に聳えるまさに後立山

19日、天気は良さそうだ。小屋を5時に出発してすぐに池の平山の稜線を登り始める。後ろには後立山が峰を連ねていた。

左手にはこれから進む剱岳の鋭峰が待ち構えており、長い1日になりそうだ。

左手下に小窓雪渓が見える。やはり、クレバスがいくつも切れ込んでいて雪渓上を歩くのは難しそうだ。本日の核心のひとつ目、池の平山ピークから小窓までの下り。ガイド、小屋の方からピークからはほとんど人が歩いていないので、ルーファイが必要で最後は懸垂下降との事。実際に向かうと、ほとんどトレースのない藪漕ぎ。僕らより先に出発したガイドパーティーが残したかどうかの微妙な薄いトレースを辿りつつ、藪を漕いで進む。行けども行けども藪漕ぎ。本当に人が歩いていないのだとわかるくらいトレースがない。小屋の人からは小窓手前の下りはとにかく馬場島側に沿う様に歩けと言われていたので大きくはそのルートから外れないよう歩く。そして最後の小窓手前の下り。実際に行ってみると、クライムダウンはやはり難しそうだ。ただ、懸垂下降するには1ピッチで済む感じでもない。ガイドの方からロープがあれば懸垂で降りれると聞いていて1ピッチだと思っていたが、持ってきた30mロープで1ピッチでは足りそうにない。まずは下降支点を見つける。残地スリングも古そうで、持ってきた捨て縄で支点を補強して下降する。下降しながら次の支点へ。最終的に3ピッチ、捨て縄も3本使用して小窓に降り立った。

小窓雪渓
小窓の頭への登り
姿を見せず不気味に聳える小窓ノ王

直接見てみたかった小窓ノ王までやってきた。情報によると、ここの壁は脆く落石の恐れがあるとのこと。この夏にも小窓ノ王付近で3名が亡くなっている。ここからは、ルーファイに長けているTNに先頭をお願いする。

垂直に聳り立つ王

小窓ノ王基部を回り込んで三ノ窓方面へ。上部からの落石に怯えながら悪いガレ場を進む。小窓ノ王基部にはいくつもの残地ハーケン、古びたスリングがあり、昔から何人ものクライマーが取り付いていたのがうかがえる。

通ってきた小窓ノ王基部

三ノ窓付近のテン場で使われているだろう整地されたところで休憩し、難所の池ノ谷ガリーへ。小窓一帯はガスが出ていた影響もあるかもしれないが、独特の雰囲気がある。良い雰囲気というわけではないが、嫌いではない。予想はしていたがガレて悪い池ノ谷ガリーを登っていく。何も考えず登ると足場が崩れて登りづらい。池ノ谷ガリーを登り切りコルへ。

池ノ谷尾根の頭を見上げる

池ノ谷乗越に着き、尾根の頭は左側のチムニー部分をフリーで抜けた。ここも、よくルートを見極めないと危ない登攀となりそうだ。ボルトは見る限り見当たらなかった。

剱の鋭峰を振り返る
計画立てるも潰れて中々登らせてくれない八ッ峰

予定よりだいぶ遅れて山頂に到着。いたのは我々と源治郎からきたパーティーの2組のみ。小休止して早々に下山開始。

山頂から釼沢を見下す

私はここからのルートは初めて。有名なカニのたてばい、よこばいを通る。思っていたより怖い。時間があるならロープを出しても良いなと思うほど、落ちたら危険な箇所を通過。集中を切らさないよう慎重に下る。登り始めてから12時間を超えており、気の抜けない箇所が多かったので思った以上に疲れが出てきている。昨晩の夕飯を大分残していたせいかMIがシャリバテか登りになるとペースがかなり落ちる。淡々と歩き続け18:00剣山荘到着。風呂があるようだが、到着遅くなってしまったので、入浴時間が終わってしまっていた。すぐに夕飯となる。ここは夕飯時のアルコールは禁止となっていたので、夕飯食べて落ち着いてから少しだけ嗜み疲れもあったので布団に入った。

写真でよく見る道標と剱岳

翌朝3日目にしてようやく晴れた。今日は下山して帰るだけなので、朝もゆっくりと朝食をとり、小屋前のテラスで剱沢の山々を見ながらコーヒーを頂いた。

3000m級の山々が四方に広がっている立山は、今年何回か行った涸沢とまた違いとても良い景色が広がっていた。

みくりが池

剱岳へ登るルートは四季を通してたくさんある。今回は室堂から周回の北方稜線だか、宇奈月からの北方稜線、そしてその途中にある「天国への階段」というところも実際に登ってみたい。他にも小窓尾根、剣尾根など、剱岳へのルートはたくさんあり、行けるうちにトライしたみたい。

今回計画、小屋などの手配をしてくれたMI、ルーファイ、帰りの運転等してくれたTNには感謝したい。

また面白そうなルートあれば行きましょう!!